国際ニュースと経済ニュースを見ていて、ふと思ったこと。
現在の世界経済の動向には、実際の商取引よりも、むしろ短期的な売買で利ざやを稼ぐ投機筋が大きな影響を与えているように思う。株式市場や為替市場に動きがあると、専門家たちはその理由を分析し説明するが、それをずっと聞いていると、どうも後づけで理由を付けているような気がしてくる。
トランプ大統領が当選した時、為替市場ではリスク回避の円高が加速したが、その直後、手のひらを返したように一気にドル買いの流れに動いた。トランプ大統領の掲げる保護主義によってアメリカ経済が今後良くなるという予想から株価も高騰した。それまで「トランプが大統領になったら世界がメチャクチャになる」と不安感を煽っておいてからの押し目買い。まるで世界経済が投機筋のマネーゲームに翻弄されているかのようだ。
投機筋にとって一番嫌な状態は、市場が安定して値動きが小さくなることだ。上がるのであれ、下がるのであれ、とにかく相場が大きく変動しさえすれば、それだけ利益を生むチャンスが得られるからだ。そんな投機筋とニュースを求めるメディアとの利害が一致した結果、事あるごとに期待や不安を煽る報道がされ、一見、経済が動いているように見せているのではないだろうか。結局、今アメリカでトランプノミクスと騒いでいるのも、トランプ大統領の政策にボロが出てくる前に高値で売り抜けるための、意図的な景気の盛り上げのように思えてならない。
それはともかくとして、トランプ大統領の自国第一主義は、短期的にはアメリカ経済を上向かせるだろう。しかしそれは「世界のお金の流れを自分たちの所でせき止め、一時的に懐を潤す」というやり方でしかなく、先々では世界経済全体の停滞を引き起こす可能性が高い。また、そんなアメリカを迂回する新しい経済の流れが出来上がることも予想できる。
そして何より、最大のリスク要因は、トランプ大統領の外交政策だろう。冷戦終結後、世界を牛耳ってきた西側諸国の中心であるアメリカも、今では経済・軍事の両面において、かつてほどの圧倒的な力は無い。国際情勢について基本無関心なトランプ大統領によって、世界におけるアメリカの影響力が今後さらに弱まる可能性は高い。
一方の力が弱まれば、他方の力が強まるのが自然である。アメリカの影響力が縮小すれば、拡大するのは主にロシアと中国だ。野心旺盛な両国も同様に自国第一主義をとっている。アメリカ含め、そんな国々が世界の三大巨頭となりつつある今、反グローバリズムという追い風を受けた世界の分裂は止めようのない流れとなるだろう。そうなれば当然、世界経済という大河は先細り、各国の財政状態は悪化する。そして、経済関係の断絶は、そのまま友好関係の断絶に繋がる。それが第三次世界大戦にまで発展するか、その前で踏みとどまるか。もし本格的な分断の時代が来たら、遅かれ早かれ世界はそんな極限の状況に追い詰められることになるだろう。
今、そのカギを握っているのが、EUである。今年行われるフランスとドイツの選挙結果次第で、事実上、EUが存続するか崩壊するかが決まると言っても過言ではない。ただ、いずれにせよ上記のような極限状況は、人類が次のステージに進むために必要なステップであるように私には思える。
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