2013/10/11

Nepal-124: チャイルド・フェスティバル ②

子供向けFMラジオ『チュヌムヌ』主催のイベントが、ポカラで開催されている。
2日目の今日は、クイズ・コンテストが行われる予定で、これにはビル、スリジャナ、サンジェイの3人が1チームとなって出場する。
予選は二つのグループに分かれ、順に行われたが、うちのチームは最初のグループだった。
ちなみに、他の出場者は各学校の代表で、うちのチームよりも年齢層も高い。
正直、予選突破は難しいだろうが、まぁ、ダメで元々。
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人が頑張って楽しんでくれれば、私としては十分である。


ステージに7チームが上がり、それぞれ自己紹介をしていく。
クイズの出題形式は、テレビのクイズ番組っぽい感じで、各チームが順番に正面のスクリーンに映し出されたいくつかのジャンルの中から好きなのを選び、答えていくという流れだ。
出場者と会場に段取りの説明がされた後、いよいよクイズ・コンテストが始まった。

問題は英語とネパール語の両方で出され、制限時間は20秒くらいだ。
ネパールに関する問題も当然あったが、世界の国々や偉人に関する問題が多かったのは、少し意外だった。
ただ、問題や答えに「どう考えても違うだろ」的な間違いがかなり多かったのが、ネパールらしいと言えばネパールらしい。
例えば、『世界最大の眼球を持つ動物は?』という問題で、ビルたちが「シロナガスクジラ」と答えたが、正解は『ウマ』という事で不正解となった。
いや‥‥正確にシロナガスクジラの眼の大きさを知ってるわけじゃないけど、どう考えてもウマよりは大きいだろ。(実際、後で調べたら倍以上大きかった)
また、『砂漠の無い大陸は?』という問題では、「南極大陸」と答えたら不正解で、正解は『ヨーロッパ』だった。
南極に砂漠あんのか?――――てゆーか、ヨーロッパって単独の大陸じゃなくね?
その後も、『国歌の無い国は?』という問題の答えが『スイス』だったり(スイス国歌はある)、『ドイツの通貨は?』の答えが『マルク』だったり、世界の常識をまるっきり無視したクイズ合戦が繰り広げられた。
極めつけは、『世界最長のヒマラヤ山脈は何山脈?』という、もはや論理すら超越しているものもあった。(ちなみに答えは『アンデス山脈』だった)
しかし、恐ろしいのは、会場にいる数百人の観客の誰も答えに疑問を持つ事無く、勝負の行方に一喜一憂している事だ。
問題を出している方も、答えている方も、それを観ている方も、誰一人その問題と答えを理解していないという、ある意味、奇跡的な状況が生まれていたのである。
ツッコミを入れようかとも一瞬思ったが、何となく大人気ない気がしたのでやめておいた。
というか、全ての間違いを指摘していたら、このコンテスト自体が崩壊してしまうだろう。
このように、集団においては、事実にかかわらず、大多数が信じている事が真実になってしまうのである。
人間の認識や社会の常識というものが、如何に不確かなで脆弱なものか、まざまざと見せつけられた気がする。

やがて予選が終わり、ビルたちは案の定、予選落ちとなった。
しかし、内容が内容だっただけに、残念というよりも、むしろ白けてしまった感がある。
まぁ、とは言え、みんなそれなりに楽しめたようだから、参加してみたのは正解だった。
イベント自体もそれなりに盛況だったので、チュヌムヌとしても成功と言えるだろう。
機会があれば、今度は私も企画する側に回って、何か面白いイベントを考えてみたいものだ。

さて、クイズ大会の後、問題と答えに疑問を感じていた生徒たちに、ネットで使って実際の所を調べさせてみる事にした。
いわゆる、『メディア・リテラシー』の教育である。
対立する二大国・インドと中国に挟まれたアジアの最貧国・ネパールは、経済・産業・情報・思想、全てが世界から百年単位で遅れている。
にもかかわらず、ほとんどのネパール人がその事を認識していないどころか、自国を世界でも比較的進んだ国のように考えているフシがある。
『無知の知』すらないから、バカの集団が毎日のように国のあちこちでストやデモを起こし、互いに足を引っ張り合い、結果、国が一向に発展しないのだ。
この状況を変えるには、若い世代が『事実を自分で調べる』という習慣を身につけ、安易に思想誘導されるのを防ぐために不可欠だ。
特にネパールでは、教科書がそもそも間違いだらけで、大学の教師が平気でウソを教えているような状況なのだから、入ってくる情報は全て疑ってかかる必要がある。
幸い、今の時代はネットで大抵の事が調べられるし、英語教育だけはかなり熱心なので、ググり方さえ覚えてしまえば問題解決は難しくない。
そうして正しい知識を身につけた、近代的な考えの出来る若い世代が、脳ミソの石化した古い世代を一日も早く駆逐してくれる事を願ってやまない。


ところで、世界最大の眼球を持つ動物は、どうやら『ダイオウイカ』のようである。
ちなみに、バスケットボールくらいの大きさらしい。
参考までに。

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