2012/09/11

Nepal-101: 4人目

KH学園の入学試験の後も、スリジャナは毎日、特別クラスに出席していた。
他にもビルとシュレンドラはもちろん、新しい4年生も何人か毎日勉強しに来ていた。
また、シャムロック・スクールのススミタとキーランも、家や畑の仕事の合間にやって来ている。

シャムロックと言えば、去年、ビルとシュレンドラが入学試験を受け、二人とも落ちている。
それで私は二人をKH学園に入学させることに決め、その後の事も考えてホステルを設立することにしたわけだ。
しかし今年、スリジャナにはシャムロックの入学試験を受けさせていない。
自分のホステルを設立したことで、シャムロックに頼る必要が無くなったというのもあるが、それ以前に、シャムロックへの進学がはたして良い選択と言えるか、疑問に感じるようになったからである。


シャムロックはアイルランド人のビジネスマンが出資している、ほぼ無料の全寮制中高一貫校だ。
3年前、私は当時SG小学校の5年生だったススミタとキーラン、そして、スリジャナの兄・ビシュヌとその他2人、計5人の卒業生にシャムロックの入学試験を受けさせた。
その結果、ススミタとキーランが合格し、二人はシャムロックに入学した。(落ちた他の3人も地元の私立校に進学している)
一昨年は、支援するに相応しい生徒がいなかったため、誰もシャムロックの入試を受けていない。
そして去年は前述のとおり、ビルとシュレンドラが挑戦した。

私が卒業生たちにシャムロックの入学試験を受けさせてきたのは、決してシャムロックという学校がベストだからではない。
公立小学校の生徒の大半は、卒業後、公立の中高一貫校に進学する。
公立校の質の低さは、今さら言うまでも無いだろう。
しかし、私立の学費が払えなければ、選択肢はそこしかないのだ。
そんなジレンマを抱える家庭にとって、シャムロックはまさに希望の光だったのである。

しかし、ススミタとキーランが入学して以来、3年間シャムロックを見てきて感じるのは、この学校の教育の質は(他の私立校と比べても)決して高くない、ということだ。
英語に関しては、外国人ボランティアが来ることなどもあって、かなり高いレベルにあると言えるが、他の教科では目を引く部分はほとんど無い。
出資者が教師の給料を安く抑えているので、優秀な教師が来ないというのが一番の理由だろう。
ここ1~2年は卒業したOBOGを非常勤教師として使い始めたようだが、自分の勉強もある現役の学生を使うことには、教師・生徒・学校の三方にとって大きなリスクが伴う。
なにか学校そのものが、徐々に破綻に向かいつつあるような気配さえ感じるが、そもそも出資者の思いつきで始まったような学校だけに、状況次第ではいつ終了となってもおかしくない危うさを孕んでいるとも言える。
まぁ、今後も私が自分の生徒をシャムロックに連れてくることは無いだろう。

さて、話を元に戻そう。
スリジャナがKH学園の入学試験を受けてから一週間後――――私は入試の合格発表を見るため、再びKH学園を訪れた。
掲示板に貼られた紙には、合格者の名前が列挙されている。
スリジャナの合格を疑ってはいないが、それでも少し緊張しながら、私はリストに彼女の名前を探した。
――――あった。
スリジャナは無事、合格していた。

こうして、私のホステルに4人目のメンバーが加わることになった。
正直、スリジャナについては、まだまだ不安な部分はあるものの、当面は本人の頑張りに期待したいと思う。
ビルとシュレンドラはこれまで通り、頑張ってやっていくだろう。
サビナに関しても、まぁ、マイペースにやっていくだろう。
ネパールの短い春はいつの間にか終わり、季節はもう夏になっていた。

やがて程無く、私が帰る日がやって来た。
あっという間のヶ月だったが、おかげで今回も充実した日々を送ることができた。
次に来るのは、おそらく9月頃になるだろう。
それまでは、日本でまたちょっとお金稼いでおこう。


左からスリジャナ、ビル、シュレンドラ

0 件のコメント:

コメントを投稿