2013/03/26

Nepal-111: 数学コンテスト ⑧

第一ラウンドの制限時間は30分で、出題数は20問。
一問あたり1分半だが、全て小6~中2レベルの基礎問題なので、参加者の基礎能力を計るには適当な時間だろう。
各教室の監督は全てボランティアに任せているので、私はそれぞれの教室を見て回る。
あらかじめ、カンニングがしにくい机の配置と席の割り当てにしてあるので、特に怪しい行動も見られなかった。
制限時間が短いだけに、どの生徒たちも必死になって問題を解いていた。


そうこうしてる間に30分が過ぎ、第一ラウンド終了の鐘が鳴り響くと、各教室のボランティアが回収した解答用紙が私の元に集まってきた。
私はそれらを束ねて封をした後、第二ラウンドの問題用紙を各ボランティアに配る。
当初は第一ラウンドの成績優秀者だけが第二ラウンドに進出する予定だったが、考えなおして全員に受けてもらうことにした。
コンテストは今日一日で終わらせなければならないのだが、当初の予定よりも問題数が多くなったので、この場で即採点する時間的余裕が無い、というのがその理由だ。
また何よりも、「ネパールの薄っぺらい数学しか知らない学生に数学教育の奥深さを知ってもらいたい」というのがこのコンテストのそもそもの動機なので、せっかく参加してくれた学生には、解けようが解けまいが一応やらせてみるべきだと思ったからである。

その第二ラウンドの出題数は18問、制限時間は90分だ。
第二ラウンドは比較的難易度の高い応用問題で構成されているので、一問あたり5分の時間を与えることにした。
――――とは言っても、半数以上の問題は日本の中学受験用の問題集を参考にして作ったものなので、解くために必要な公式や知識はごく基本的なものばかりだ。
ちなみに、それらがネパールの8年生までのカリキュラムに入っていることは確認済みなので、「まだ習ってないから‥‥」という言い訳は通用しない。

30分後、第二ラウンドの開始を告げるベルが会場のKH学園に鳴り響くと、各教室から一斉に紙をめくる音が聞こえてきた。
果たして、初めて見る日本式の問題に、ネパールの生徒はどんな反応を示すだろうか。
まず私は、ポカラの有名私立校から参加している生徒たちの教室を見に行った。

第二ラウンドが始まって5分。
教室の雰囲気は第一ラウンドとは打って変わって、静まり返っていた。
手の動きが明らかに鈍い。
解答用紙を覗けば、色々と試行錯誤している様子が見られる。
早々と見切りをつけ、解けそうな問題から解いているテスト慣れした生徒もいる。

他の教室でも、重苦しい雰囲気が場を支配していた。
始まって30分もすると、すでに諦めて退出している生徒もいる。
ネパールの試験には、時間が終わるまで席についていなければならない、というルールは無いからだ。
一学年丸ごと参加してきた郊外の私立校など、もはや大半の生徒が宙を眺めている。



そして――――90分が過ぎ、第二ラウンド終了のベルが鳴った。
各教室のボランティアに第一ラウンドと同様に解答用紙を集めてもらい、受験番号順に並べ替えて束ねる。
その後、今日参加してくれた学生と引率の先生たちに、私から感謝の意と共に、コンテスト結果発表の日時と方法を伝える。
最後に、AAEE用にボランティア含め全員で記念撮影をして、第一回AAEE数学コンテストは幕となった。

初めての割りには特にトラブルも無く、たくさんの参加者にも恵まれ、まずは成功と言って良い内容だったと思う。
協力してくれたAAEES先生とボランティアの方々、KH学園の理事長と教師たち、そして、ラジオ・チュヌムヌの友人たちには深く感謝している。
この借りはその内返すとして、さて、残すは採点だけだが、果たしてネパールの私立校生徒の数学力はどれ程のものなのだろうか。
個人的にも非常に興味深いデータが取れそうである。



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