2013/03/31

Nepal-112: 数学コンテスト ⑨

コーディネーターとして私が関わった初のイベントは、こうして成功のうちに幕を下ろした。
後の作業は採点と結果発表、そして成績優秀者の表彰だけである。

採点に関しては、評価基準を統一するために私一人でやることにした。
ただ一応、採点ミスの可能性も考慮して、長期休暇中のホステルの生徒・シュレンドラに確認を手伝ってもらう。


第一・第二ラウンド合わせて200枚近い答案があったが、採点は思いの外、早く終わった。
全ての答案に点数を付け終わったら、次はそれらをデータとしてまとめる作業である。
既に作ってある参加者名簿にそれぞれの得点を入力していき、全体と各校の平均点、さらに各問の正答率を割り出す。
こうして全てのデータが出揃った。
その数値はまさに驚愕すべきものだった。

その結果発表の前に、参考までに今回のコンテストで出題された問題をいくつか公開してみたい。
まず、こちらが第一ラウンドで出された問題だ。



ご覧の通り、ごく基礎的な問題である。
そして、こちらが第二ラウンドの問題。



こちらは多少複雑だが、8年生(日本の中学2年)ならば決して難し過ぎるということも無いだろう。(ちなみに三平方の定理は、ネパールでは7年生で習う)
さて、いよいよ結果発表である。


【第一ラウンド】
最高点: 16点(20点満点)
平均点: 6.1

【第二ラウンド】
最高点: 7点(18点満点)
平均点: 1.5


‥‥‥‥低い‥‥‥‥いくらなんでもこれは低過ぎる‥‥。
採点してる時から危険な香りが漂っていたが、こうして数字にしてみるともはや言葉が出ない。
むしろ、出題レベルを間違ったような気にすらなってくる。
前にも書いたと思うが、このコンテストの目的の一つは、時刻の数学と先進国である日本の数学とを比較することで、間接的にネパールの数学教育の欠陥を理解してもらうことだった。
しかし、これほど惨憺たる結果だと、学生よりも教師たちの方が強い拒絶反応を示すだろう。
現にネパールの教師には、自国の教育が他の国よりも優れていると信じ込んでいる者も少なくない。
ネパールの学校で使われている教科書を見たことのある人間にとっては失笑ものの勘違いだが、山奥の最貧国ゆえに外国の知識に触れる機会をほとんど持てず、ただ井の中で自我を肥大させてきた彼らの意識を変えることは不可能に近い。
‥‥まぁ、それがネパールの最貧国たる所以なのだが。

いずれにせよ、せっかく参加してくれた生徒や学校を晒し者にするわけにも行かないので、メディアでの結果発表は上位入賞者だけ名前入りで公表し、後は受験番号と点数だけ記載することにした。
また、複数の生徒が参加してくれた学校には、後日、それぞれ個別に結果を報告する。
コンテストで出題された問題も、後日、詳しい解説をつけて『チュヌムヌ』の月刊誌に載せることになっている。

そして、コンテストの一週間後。
地元紙『ポカラ・アワーズ』とFMラジオ『チュヌムヌ』と『ビッグFM』にて、第一回数学コンテスト入賞者の発表が行われた。
一位から十位までの入賞者は、後日執り行われる表彰式に招待され、賞金と賞品が渡される。
残念ながら私はビザの関係で早めに帰国しなければならなかったため、表彰式には出席できなかったが、代わりにAAEE代表のS先生が全てを取り仕切ってくださった。
こうして、私が初めて企画・立案・監督をした実験的なイベントは、ひとまず成功と呼べる形で幕を下ろした。
準備期間中は死ぬほど忙しかったが、刺激的で充実した時間を味わうことができた。
いずれまた機会があれば、今回の経験を活かして、第二回数学コンテストを開催してみたいと思う。
以上、2012年のネパールでした。

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