2013/07/10

Nepal-115: クビ

前回書いたように、ホステルにはいくつかの問題があった。
私はビル、シュレンドラ、スリジャナの3人に何が問題かを説明し、このままだと彼ら自身にどんな悪影響が出てくるか言って聞かせた。
SG
小学校の頃から教えている彼らは、基本的に私に対しては素直だ。
また、自分が「何をすべきで、何をすべきでないか」が分からないほど愚かでもない。
だから、注意して様子を見守ってやれば矯正は難しくない。
しかし、そう簡単には行かない人間が、生徒の他に一人いる。
それは寮母役のサビナである。


サビナの妹弟のススミタとキーランはSG小学校の卒業生で、ビルとシュレンドラの2年先輩にあたる。
この二人は私が最も目をかけていた生徒たちだったが、当時は私もまだ知識不足だったので自分で支援するのではなく、ポカラの『シャムロック・スクール』への入学を薦めた。
『シャムロック・スクール』は元軍人のアイルランド人実業家が作った全寮制の学校で、学費も生活費もほぼ無料だったからだ。
当然、その入試倍率は非常に高いが、ススミタとキーランは見事それを突破し、シャムロックの生徒となった。
それ以降も私はちょくちょく彼らの様子を見に行ったり、休暇で村に帰っている時は特別クラスで勉強を教えたりしていた。
私が寮母を探していた時も、その話を彼らから聞いたサビナが興味を持ち、私が彼女を雇うきっかけとなった。
彼女はどう見ても「頼りになりそう」という印象とは程遠かったが、少なくとも素行に問題のあるようには見えなかったし、母子家庭で二人の妹弟の面倒を見てきた経験からも、寮母には向いているように思えた。
また、当時は私の滞在期限も迫っており、一日も早く寮母を見つけなければならないという事情もあった。

しかし、当初はそれなりの責任感を持ってやっていた彼女も、時間が経つにしたがって段々とその行動に問題が見え始めた。
それらの問題をまとめて一言で言えば、都会の生活に浮かれて、与えられた仕事をきちんとやらなくなった、というところか。
さらに、その点について注意すれば拗ねて、「村に帰りたい」などと言ったりもする。
ただそれが本心ではなく、寮母がいなければホステルが成り立たないことが分かっていて、こちらの足元を見ていることは私も見抜いていた。
そんな中、私が日本にいる間にサビナがホステルの電話を使って、男友達と毎日何時間も喋っていたことが発覚した。
その数ヶ月間の電話代は、じつにネパールの平均月収に匹敵するものだった。
しかも本人には反省の様子が見られなかった。
ここまでアホだともはや救いようがない。
ということで、私は彼女をクビにする事を決めた。
本人は今回も許してもらえるだろうと考えていたのだろうが、生憎、来たばっかりの私には新しい寮母を探す時間がたっぷりある。
いつものように拗ねて「辞めたいなぁ」と口走った彼女に私は、「オッケー♪ じゃ、別の人探すね?」と即座に応じたのだった。

0 件のコメント:

コメントを投稿