2013/08/30

Nepal-122: 心機一転

こうして全員が無事KEFに合格し、今年度からホステルにサンジェイとジャラナが加わる事が決まった。
サンジェイの家族も大喜びで、父親などは出稼ぎ先のカタールから私に直接電話してきたほどだ。
一方、プシュパとその母も、ジャラナのKEF合格に心底ホッとしたようだ。
これでホステルのメンバーは総勢6名となり、休み明けからプシュパによる新体制でのスタートとなる。
しかし、人数が増えれば、それだけ管理は難しくなる。
特に新しく入るサンジェイとジャラナはまだ小さく、どちらも少し甘やかされてきたようなので、しばらくはバタバタした日が続くだろう。


さて、春休みはまだ終わってないが、私には今のうちにやっておかなければならない事がたくさんあった。
まず、新学期が始まるまでに全員の転校・入学手続きを済ませなくてはならない。
ちなみに生徒たちが入学する学校についてだが、マザーランドにも合格しているビル、シュレンドラ、スリジャナ、サンジェイの4人には、どちらでも好きな方を選ばせる事にした。
ジャラナはKEFで決まりなので、全員KEFに行かせるのが一番手っ取り早いのだが、主体性を育てるためには選択の余地を与えたほうがいいだろう。
それに正直言って、私にしてもどちらの学校が彼らにとって良いのか、ハッキリと判断を下せるだけの十分な材料は持っていない。
そんなわけで、私は生徒たち一人一人にどちらの学校に行きたいか訊いてみた。
その結果、ビル以外の全員がKEFを希望した。
ビルだけがマザーランドに行きたいと言ったので、私は「一人で行くことになるがそれでもいいか」と念を押したが、彼は希望を変えなかった。
恐らく、彼には彼なりの考えがあるのだろう。
私もこういう『一人だけ別の道を行く』といったタイプだったので、彼の意志をできるだけ尊重してやりたいと思う。
その他の4人については全く問題無い。
サンジェイとジャラナが一緒のクラスになる事は、二人にとって良い相互作用を生むと期待できる。
スリジャナも性格的に言って、KEFの和やかな雰囲気のほうが合っているような気がする。
年長のシュレンドラが一緒なら、登下校の時も比較的安心していられる。
SG
小学校からずっと一緒だったビルとシュレンドラが別々の学校に行き、別々の教科書を使って勉強するというのは、お互いにとって刺激となるはずだ。

それとは別に、新しく二人の生徒がホステルに入るとなると、今使っているベッドを二段ベッドに替えなければならない。
しかし、日本なら大抵の家具屋で売っている二段ベッドも、ポカラではなかなか見つける事ができなかった。
製造業全般がまるで発達していないネパールには、多種多様な製品を市場に提供できる生産者がいない。
最近でこそ大型のデパートが出来たり何だりで、色々なものが手に入るようになってはきたが、ほとんどの商品はインドや中国からの輸入品で、国内産は数えるほどしか無い。
出稼ぎ労働者が国外で稼いできた金で国外から輸入した製品を買う、というこの経済のサイクルが、ネパールの産業が一向に発達しない原因だ。
そして、政情の不安定さや教育水準の低さなどが、それに拍車をかけていて、改善の気配すら見えないの現状なのである。

話を戻そう。
私は友人に紹介してもらった家具屋に行き、二段ベッドを扱っているか訊いてみた。
しかし、ネパールでは二段ベッド自体があまり浸透していないらしく、取り扱っている店を探すより、オーダーメイドで注文したほうが早いようだ。
ちなみに、ここで頼むとしたら18,000円で作ってくれるらしい。
私が以前働いてた家具屋でも、一番安いパイン材の二段ベッドで2万円くらいだった記憶があるので、原価などを考えると妥当な値段だろう。
一週間ほどで出来るとの事だったので、3台作ってもらう事にした。

学校が始まる二日前に、生徒たちはホステルに戻って来た。
次の日は、仕立屋に注文していた制服を受け取ったり、学校指定の文房具店で教科書やノートを揃えたりと、それぞれが学校に行く準備を整える。
みんな明日から行く新しい学校に対して、不安と期待で一杯のようだ。

学校、初日。
いつものようにホステルの朝は掃除で始まった。
寮母のプシュパが役割分担を決め、室内や階段、トイレなどを手分けして掃除する。
新しく入ったサンジェイとジャラナも、掃除の仕方を教わりながらやっている。
その後、日課である朝食前の計算ドリルを済ませると、みんなで朝食の用意をする。
ネパール人は朝食もガッツリと米を食べる。
朝食が終わったら皿洗いと台所の掃除をし、いよいよ学校へ行く準備をする。
自分たちでアイロンがけした制服を着て、男の子はネクタイを、女の子は髪をリボンで結き、教科書のたっぷり詰まったカバンを背負い、ブラシがけした革靴を履く。
KEF
に行くシュレンドラ、スリジャナ、サンジェイ、ジャラナの4人は、ホステルの前でスクールバスに乗る。
学校まで距離もあるし、交通量が多いので、まだ小さいサンジェイとジャラナを徒歩で通学させるのは不安だからだ。
一方、マザーランドへの道はそうでもないので、ビルには歩いて通ってもらう事にした。
30
分弱の道のりだが、村の子供たちは1時間近くかけて山道を歩いていくのだから、それに比べたら楽なものだろう。


こうして、新しいホステルの新しい一年が始まった。
さあ、今年は一体どんな事が起こるだろうか。

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