2012/06/04

Nepal-085: 奨学金

シャムロックの入学試験に落ちてしまったビルとシュレンドラ。
しかし、彼らの成長に大きな可能性を感じた私は、私立校の学費を『奨学金』という形で援助する事にした。
ちなみにネパールの場合、私立校といっても学費自体はだいたい月2,500円ほどでしかない。
ただ問題はどこの学校に行かせるか、という事である。


ネパールでは昨今の学習熱の高まりにより、私立校経営がメジャーなビジネスとして確立している。
都市部だけでなく、主要幹線道路を中心に膨大な数の私立校が乱立し、その質もバラバラというのが今の状況だ。
例えば、SG小学校のあるラムガディ村の子供の半数は近隣の私立校に通っているが、彼らのような郊外の私立校の生徒と都市部の私立校の生徒とでは、学力にかなりの開きがある。
そんな学校に通わせたとして、果たして彼らの将来がどれほど変わるのだろうか。
とは言え、村から片道一時間半かけてポカラ市内の学校に毎日通うのは、123歳の子供には少し厳しいだろう。
基本的に市内の学校に通う子供たちは市内に家があるか、あるいは寮に住んでいる。
ネパールでは特に出稼ぎで海外に行っている親が多いので、ある程度の規模の私立校ならどこも学生寮を持っているのだ。
だから、子供が一人親元を離れて寮で生活するというのは、ここでは決して珍しくないのである。
しかし、寮の費用は学費とは比べ物にならないくらい高い。
そこにビルとシュレンドラの二人を住まわせるとなると、私にとってもかなり痛い出費になってくる。
一度支援を始めるからには、少なくともSLC(高校卒業試験)のある10年生までは、学費を続けなければならない。
二人くらいならまだ可能だとしても、この先、他に見所のある子を見つけても同じように支援するのは不可能だ。

選択肢は三つ。
A.
村の近くの私立校に行く
B.
がんばってポカラの私立校に通う
C.
全部忘れて公立校に行く

ただし、援助を受けるから場合は、当人もそれなりの覚悟を追う必要があると私は考える。
ちなみに、以前書いたかもしれないが、支援活動をする人間が覚えておかなければならない公式というものがある。

      援助効果 = 援助する側の負担 × 援助される側の負担
      例えば、支援者が10の援助をした時、援助される側の負担が5ならば、10×550の援助効果が得られる、という具合である。ちなみに『負担』の内容は、『金銭・物品・時間・労力』を総合したものだ。

世の中には勉強嫌いで留年しているような子供に奨学金を払っている気前のいいNGOもあるが、私はそんなにリッチではない。
というわけで、私は奨学金のルールを以下のように決めた。

1. 奨学金は無償ではなく、就職後に返済しなければならない。(※返済されたお金は別の子供の奨学金に充てられる)
2.
成績がクラスの平均を下回ったら打ち切り。
3.
その他、生活態度などに問題があっても打ち切り。


これらは要するに、一度奨学金を受け始めたら何が何でも良い仕事につけるよう、卒業までノンブレーキで走り続けなければならない、という仕組みである。
まぁ、正直な所、奨学金の返済についてはそこまで期待している訳ではない。
今のネパールの現実では、たとえ高学歴でもコネが無ければ良い仕事につくのは難しい。
途中でドロップアウトする可能性も無い訳ではない。
大雑把に見積もって、奨学金を回収できる確率は五分、といったところだろう。
それでも彼らが安心し切ってしまわないように、危機感とハングリー精神を失わないように、あえて返済義務を負わせる事にしたのだ。
人生を変えるほどのチャンスを掴みたければ、それぐらいの覚悟はあって然るべきだろう。
このルールを説明した上で、私は二人に考える時間を一日与え、奨学金を受けるかどうか彼ら自身に決めさせる事にした。

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