2012/06/05

Nepal-086: 私立KH学園

奨学金と共にリスクを背負うか。
私はビルとシュレンドラに一晩考える時間を与え、親とも相談させた。
そして翌日、彼らは揃ってポカラの私立校へ行くことを希望した。
彼らの瞳には、長時間の通学もより大きな責務も辞さない強い意志が見えた。

私は早速、ポカラの学校探しを始めた―――というか、すでに目星はつけてあった。
そこは友人の親戚が理事長を務める、KH学園という名前の学校だった。
下は幼稚園、上は短大にあたる12年生まであり、総生徒数が1600人というとても大きな学校だ。
ネパールの学校―――特に私立校は、このように小中高一貫校となっている所が多い。
シャムロックの試験結果の発表が遅かったので、入学願書の受付はすでに終わっていたが、友人のコネのおかげで特に問題無く手続きは進んだ。
このように、ネパールでは何をするにもコネが重要な意味を持つ。むしろ、コネで全てが決まるといっても過言ではない。
文字通り時代の流れに取り残されたこの国はいまだ役人が威張り散らし、権力者が好き勝手に振る舞っている封建社会なのだ。
この病巣は、マオイストが革命を達成した現在になっても、何ら変わる兆しを見せていない。
国を動かす者たちが近代化を受け入れ、旧くからある不条理を正していかない限り、この国の普通の人々が安定した暮らしを手にすることは不可能だろう。

KH学園はシャムロックと違い、基本的に入学希望者は誰でも入れる学校だ。
それでも一応、編入テストというものはあり、希望するクラスに入れるかどうかチェックされる。
ちなみに公立校と私立校では、生徒の学力に大体12年の開きがある。
その原因は教師の質にもあるが、もう一つは使っている教科書の違いである。
この差は都市部と郊外でさらに顕著になってくる。
そのため、公立から私立に転校する場合、12年下のクラスに編入することを勧められる。

しかし、学力チェックの結果、ビルとシュレンドラは6年に編入可能との事だった。
私がみっちり教えこんだのだから当然だが、一方で私の教えていない科目には不安が残った。
一応、彼らもSG小学校で5年の全課程を修了しているが、このままKH学園の6年に編入しても上位に入るのは難しいだろう。
ススミタとキーランですら一昨年、シャムロックで5年生をやり直しているのだ。
それをせずに私立の6年に編入した彼らの元クラスメートは、今見事に落ちこぼれている。
新しい環境に馴染むため、そして、5年生までの勉強内容を私立の方式でおさらいするためにも、やはりここは一年やり直させたほうがいい。
公立出身でも2年目ならクラスで上位になる事は不可能ではないだろうし、上位になれば自信がつき、勉強への意欲にもつながる。
そう考えた私は、KH学園の教師にビルとシュレンドラの5年への編入を希望した。
当然、学校側にそれを断る理由はないし、ビルとシュレンドラも私の考えに異存はない。
こうして二人のKH学園編入が決まった。

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