2012/07/20

Nepal-093: ホステル始動

ホステル作りの仕上げは、ホステルで生活する上での様々なルールを決める事だ。
まず、掃除・洗濯・炊事といった家事は、まだ3人だけなので分担せず全員でやらせる事にする。
また、食料に関しては、彼ら自身で賄っているもらう事にする。
実家に居ても食費はかかるのだから、そこまで私が払ってやる義理も無いだろう。
それに、農村の住人たちは普段食べるものの多くを自作しているので、主食のコメやジャガイモなどを村から持ってくれば、店で買う食料は僅かな分で済む。
それ以外の日用雑貨や電気・ガス・水道・電話代などは、新しく作った銀行口座からお金を下ろして支払いをするようサビナに頼む。
もちろん、後でチェックできるよう収支表をつけ、領収書も取っておいてもらう。
彼女は銀行員を目指しているらしいので、これは彼女にとっても良い訓練になるだろう。

一日のスケジュールは、本人たちの意見を聞きながら決めた。
結果、5時半起床・21時半就寝となったが、村で暮らしてきた彼らにとってはむしろ遅いくらいだろう。
どうやら都市という環境で生きていると、人間の生活リズムは崩れる傾向があるようだ。
その他、食事や掃除・入浴の時間なども決め、それ以外を全て勉強時間に割り当てると、まるで修道院のようにストイックなスケジュールが出来上がった。
まぁ、元来時間にルーズなネパール人の彼らが、どこまでスケジュール通りに生活できるかは疑問だが、どのみち逸脱するなら出来るだけ厳しく組んでおいたほうがいいだろう。

やがて程無く、ダサイン休みの終わりがやってきた。
ビルとシュレンドラとサビナのホステルでの新しい生活が始まる。
学校が始まる前日に、私は彼らと一緒にマーケットに必要な備品を買いに行った。
幸い、最低限の家具は置いてあったので、掃除用具や食器・調理器具といった雑貨を買い揃える。
全て合わせて一万円もかからなかったが、それでも以前と比べ、かなり高くなったと感じる。

ネパールでは近年、インフレによる物価の上昇が続いている。
五年前、私が初めてネパールに来た頃と比べると、物価はほとんど倍にまでなっている。
その一因は、相次ぐストライキによって、労働者の平均給与額が上昇したせいだとも言われているが、よくは分かっていない。
リーマン・ショック以降のインド・ルピーの暴落も、大きな要因の一つに間違いないだろう。
というのも、ネパール・ルピーは通貨として自立しておらず、インド・ルピーの変動によって価値が決まるからだ。
言うなれば、インド・ルピーのネパール版といった感じだが、インド・ルピーがネパールで普通に使える反面、ネパール・ルピーはインドでは使えない。
この両通貨の関係がインドとネパールの関係、そして、ネパールの現状をありのままに表していると言える。


こうして全ての準備が整い、私のホステルは動き始めた。
今はまだ3人だけだが、これから段々と生徒は増えていくだろう。
ネパールを発つまで毎日、私は学校が終わった後にホステルの様子を見に行った。
新しい環境にもかかわらず、3人はよくやっているようだった。
食事も問題なく作れているようだし、学校の制服も自分で洗濯している。
もちろん勉強も宿題だけじゃなく、毎日の復習もキチンとやっている。
この分なら当面は大丈夫だろう――――そんな安心感を胸に、私はネパールを後にした。

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